通訳・翻訳者体験談

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通訳者・翻訳者体験談

宮内和子 (会議通訳者)
慶應大学、青山学院大学卒業。在学中よりNHK国際放送の中国語翻訳、アナウンサーを担当。卒業後、日本の総合商社に勤務。サイマル・アカデミーで同時通訳の訓練を受ける。現在、東京外語専門学校日中通訳科、中野区国際交流協会、企業などで講師を務める傍ら、フリーの通訳・翻訳者として活動。

Q なぜ語学を専攻する際に、中国語を選んだのですか?また、語学を勉強し始めてから、何年後に通訳者としてプロの仕事を始めましたか?
A 私は謂わば帰国子女で、中国で生まれ、親と共に日本へ戻り、日本で高校、大学へ進学、在学中からNHK海外向け放送の翻訳やアナウンサー担当。卒業してから商社に就職、社内の通訳・翻訳業務からスタート。現場の通訳者としての仕事を始めたのは大学を卒業してから5年以上経ってから。

Q 今までで一番心に残っている通訳の仕事はどんな仕事ですか?またそれはなぜですか?
A 一番印象に残ったのは、中国の著名な書道家啓功先生の来日時にアテンドした時の事である。あれだけ有名な先生なのに、全然威張らず、庶民的で優しく、中国の事を色々教えて頂いただけではなく、こちらの話もきちんと聞いて頂いた。10年後に、別の機会で再会したとき、「貴方のお父さんは○○だったよね」と個人の些細な事までよく覚えていて下さったのはとても感動した。

Q 通訳の仕事を通じて得た一番の収穫は何ですか?
A 学校で中々習得できないことが通訳の現場で学べた事、日中の多分野の著名人に会え、多くの事を教わった事である。知識や理論は勿論、一般では近づく事のできない人物や場面に立ち会え、大きな場で見識を広げられた事が一番の収穫である。

Q 通訳の仕事において、実際の通訳以外にどのような点に気を付けていますか?
A 〇世の中の事、特に日中間の出来事を常にアンテナを張ってキャッチする事。
〇普段、何げなく使っている言葉でも訳せるか自分の中で確認する。分からない事、訳せない言葉はほっておかず、直ぐに調べてメモする事。
〇通訳はサービス業、コミュニケーターとしては声、表情、姿勢、服装が大事、笑顔を忘れず、嫌な印象を与えないようにする。
〇仕事仲間を仕事以外の場でもフォーロできるよう大事にする。

Q 通訳中、もし専門用語(例えば化学、工学関係の専門的な名詞など)が出てきて、全く分からず、訳せない場合はどのように対応されていますか?
A ①逐次のような確認、フォーロできる場合は専門家に意味を確認、スペルと共に意味を訳し、訳語の不確実性を伝える。
②同通は時間との勝負で、聞き取れる範囲で英語など原文の外来語をそのまま使うか、前後関係で近い言葉でつなぐ。ブースに同席の仲間に調べてもらい、間に合えば、発言の終わらない内に追加して伝える。

Q 通訳の仕事中、双方の利益が衝突し、真っ向から対立し張り詰めた空気になったとき、通訳者としてどのようにその場面に対処しますか?
A 双方が興奮しているときこそ、こちらは冷静になる必要がある。余計な行動はルール違反になるが、同じ言葉でも訳語は何通りもあるので、なるべく相手を刺激しない最小限のものを選び、クールダウンできるように持って行く。

Q 通訳の現場では、メモ取り3割、記憶7割とよく言われますが、そのような瞬間的な記憶力がなければ、レベルの高い通訳の場面では対応が難しいと思います。では、どのように瞬間的記憶力を鍛えていますか?
A 〇記憶するのはフレーズではなく、話のポイントである。普段、ニュースや人の話を聞く時にぼやっと聞かず、ボイントだけ記憶するよう心懸けている。
〇自分の記憶力を強くする為に、ことわざや慣用句の訳を課題として普段から覚えるようにする。
〇音声媒体に接するときに、いつでもシャドイングするくせを身に着ける。

Q 会議通訳にふさわしい通訳者になるためには、たくさん必要な要素があるかと思いますが、その中で特に大切なことはどのようなことだと思いますか?(3つほど挙げてください。)また、会議通訳者を目指す方々にアドバイスをお願いします。
A ①知的好奇心
新語を含めて時事を常にチェックし、言葉や国際情勢の「最前線」にいる事。
②粘り強い精神力
言葉は一夜漬けでは身に着かないもので、普段こつこつ努力して言葉を極める。失敗してもくじけない事。
③協調性
殊に会議通訳はチームワークがうまく機能して初めて良い仕事ができる。
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